編み物を終えたあと、手元に何が残るかを考えたことがあるでしょうか。
毛糸は作品になります。編んだものは身につけたり、誰かに贈ったりして、手元を離れていきます。編み図も一度仕上げてしまえば役目を終えます。段数マーカーやとじ針も、その作品限りの登場です。
最後まで残るのは、編み針だけです。
一つ仕上げれば次の作品へ、そのまた次へと持ち越されていきます。同じ針を十年以上使い続けているという方も、編み物愛好家のあいだではめずらしくありません。つまり編み物の道具の中で、いちばん長く手の中にいるのは針だということになります。
それにもかかわらず、今使っている針をどうやって選んだか、はっきり覚えている方は多くありません。サイズが合うものを。セットに入っていたものを。そのときお店に並んでいたものを。毛糸を選ぶときにはあれほど時間をかけるのに、針は不思議と流れで決まっていきます。
編み針は脇役です。主役は毛糸であり、出来上がる作品のほうです。それはそのとおりだと思います。
ただ、脇役のわりに、ずいぶん長く一緒にいます。
その長さを一度意識してみると、針を選ぶという行為の意味が少し変わって見えてきます。
選び直すのに、遅いということはありません。
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)














