糸を選ぶときは、誰もが時間をかけます。色を並べ、太さを確かめ、何日も迷って決める。ところが編み針のほうは、いつのまにか手元にあったものを、そのまま使い続けている。そんなことありませんか。
黒檀は、古代エジプトでは王族の装飾品に、古代ローマでは木の宝石と呼ばれ、富と権威を示す素材として扱われてきました。成長が非常に遅く、木材として使える品質に達するまでに数十年から数百年を要します。その硬度と密度は他の木材を大きく上回ります。
金属針が主流のいま、なぜ木製が見直されているのか。理由として挙げられるのは三つです。ひとつは、硬さからくる手の疲れが出にくいこと。ふたつめは、滑りが適度で、シルクやビスコースのような滑りやすい糸を扱いやすいこと。みっつめは、編むときに音がしないこと。
道具を替えるという発想は、意外と持ちにくいものです。編み方や糸を疑うことはあっても、手に持っているものは疑わない。
一度だけ、疑ってみてもいいのかもしれません。
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)














