毛糸に名前をつける仕事があります。海外から届いた糸には番号しかついていないことも多く、そのままでは味気ないので、こちらで日本語の名前を考えます。
やり方は単純です。糸を並べて、じっと見て、浮かんだ言葉を置く。それだけです。
先日、フィヨルドソックス パズルという段染めのソックヤーンに、新しく4色が加わりました。つけた名前は、冬薔薇の余韻、霧の石畳、黄昏の港町、月夜の若葉。
並べてから気づきました。全部演歌です。
港町、霧、月夜、余韻。演歌の歌詞に必要な単語が、ほぼそろっています。前からある6色を見に行くと、そちらにも北風の詩、森の語り部といった名前が並んでいました。もう手遅れでした。
考えてみると、これは段染め糸の性質かもしれません。ひと玉のなかで色が移り変わっていく糸は、単色のように「赤」「青」と呼べません。移ろうものを言葉にしようとすると、人はどうしても情景を持ち出します。そして情景を短くまとめると、演歌に近づいていく。
日本語の色名にはもともとそういうところがあります。東雲、鴇色、浅葱。どれも景色や物の名前です。色そのものを指す言葉が少ないぶん、まわりにあるものを借りてくる。その借り方が、たまたま演歌と相性がよかったのだと思います。
お手元の毛糸の色名を、一度ながめてみてください。案外、歌えるかもしれません。
名前と色、合っているかどうか。
新色4色を含む、全10色を見てみる
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)








