「初心者ですが、ソフィーフードは編めますか。」
店頭でもオンラインでも、いちばん多くいただくご質問です。ソフィーフードは難易度でいえば五段階中の三。決して上級者専用というわけではありませんが、まったくの未経験から気軽に取りかかれる作品とも言いきれません。
まず、編み物を一度もしたことがない方には、正直に「いきなりは難しいです」とお伝えしています。針の持ち方や目の扱いに慣れる前に分量のある作品へ進むと、途中で手が止まりやすいからです。
一方で、「初心者」といっても幅があります。表編みと裏編みはできる、マフラーを一枚編いたことがある、輪針は触ったことがある。そうした方にとって、ソフィーフードは挑戦できなくはない、けれど少し慎重さが必要な位置にある作品です。
だからこそ、ここで一度立ち止まって考えてみていただきたいのです。
ソフィーフードが少し慎重さを必要とするのは、形そのものに理由があります。首元だけで完結するスカーフと違い、フードは頭を包む立体をつくります。そのため、編み進める中で分量の感覚や目の増減の管理がより重要になります。
編み地自体はガーター編みですから、技法が難しいわけではありません。ただ、編み進める距離が長くなる分、途中で「いまどこを編んでいるのか」が曖昧になりやすいのです。少しのずれが、後半になって表面化することもあります。
完成すると非常に美しい形ですが、その形は偶然できあがるものではありません。工程をきちんと積み重ねてこそ、自然な立体が生まれます。
そこでおすすめしているのが、ソフィースカーフから始めるという順番です。
形は違っても、基本の構造は共通しています。ガーター編みで進み、増減を重ねながらかたちを整えていく流れ、そして両端をアイコードで編みながら輪郭をつくる仕組み。この三つを理解できれば、シリーズ全体の骨格が見えてきます。
とくにアイコードのエッジは、見た目を整えるだけでなく、編み進める感覚そのものに関わる部分です。ここを手で覚えてしまえば、フードに取りかかったときに迷いがぐっと減ります。
また、増し目や減らし目は、数を正確に管理しなければ形が崩れます。進みすぎても足りなくても、仕上がりに影響が出ます。この管理をいきなり大きな分量で行うのは、思いのほか負担になります。
その点、スカーフは分量が小さいぶん、段数の確認も比較的楽です。どこで形が変わるのかを目で追いやすく、途中で修正もしやすい。構造を理解するには、ちょうどよい大きさなのです。
もちろん、いきなりソフィーフードに挑戦することを否定しているわけではありません。編み物は自由な楽しみですし、強い気持ちがあれば完成までたどり着く方もいらっしゃいます。
ただ、途中で手が止まってしまい、ほどいてしまう経験は、できれば一度目には避けたいものです。形が崩れた理由が分からないまま解く時間は、達成感よりも疲れを残してしまいます。
ソフィースカーフを一枚編んでおくことは、遠回りではありません。構造を体で理解し、増減の感覚をつかみ、アイコードのエッジに慣れる。その積み重ねが、フードを編むときの安心につながります。
同じシリーズだからこそ、順番には意味があります。
まずはスカーフで手を慣らし、その延長線上でフードに向き合う。そうすれば、話題の一枚も、決して遠い作品ではありません。
記事執筆:細野カレン(なないろ毛糸店長)
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