棚の中がごちゃつく理由と、それでも片付けられない現実
編み物を長く楽しんでいると、道具は自然と増えていくものです。輪針やケーブル、付け替え式の針先に、長さの違うコード。それぞれが微妙に用途の違う道具でありながら、見た目は似ていて、しかも細くて小さい。どれがどこにあるかを完璧に覚えておくのは、なかなか難しいものです。
「ちゃんと片付けておこう」と思ってはいても、使ったあとにすぐ戻す時間がない。つい空いているかごやポーチに仮置きしてしまい、そのまま別のケースにも入っていたことを忘れてしまう。そうしてまた、新しく同じサイズの針を買い足してしまう。
そういった“道具の迷子”は、編み物を趣味にする人なら誰でも経験しているはずです。
問題は、片付けの意思があるかどうかではありません。ほとんどの人は「散らかったままでいい」なんて思っていない。ただ、今の収納の仕組みが、自然と手が動くような構造になっていないだけなのです。
そんななかで、最近注目されているのが、デンマークのmuud(ムー)というブランドが手がける本革の編み物用ケースです。
たとえば「ベティーナ」というモデルは、折りたたみ式のシンプルな形ながら、開くと大小さまざまなポケットが整然と並びます。針先のサイズごとに分けて収納できるよう設計されており、持っている道具の居場所が一目でわかるようになっています。
興味深いのは、このケースに「片付けなければ」という意識を必要としない点です。収納というより、ただそこに道具を“差し込む”ことで、結果的に整理ができてしまう。戻すべき位置を毎回考えなくても、自然と秩序が保たれるようにデザインされているのです。
そしてもう一つ、muudのケースが静かに支持されている理由があります。それは、所有している満足感です。
柔らかな本革の質感や、使い込むうちに手になじむ感触は、道具をしまうという日常的な行為に、小さな喜びを添えてくれます。収納のためのケースではなく、自分の編み物の時間を心地よく整えるためのアイテムとして、このプロダクトを選ぶ人が増えているのは、むしろ自然な流れなのかもしれません。
探しものにかけていた時間を、編む時間に。
整理が苦手な人ほど、その変化を実感できるはずです。



















