こんばんは、細野カレンです。
夜の風が少しひんやりとして、窓の向こうに季節の輪郭がにじんで見えるような時間です。そんな夜に、きょうは名前の話を少しだけ。
フィンランドのソックヤーン「ナッレ タイカ」。この“タイカ”という言葉には、ちょっとした秘密があるんです。
タイカは、フィンランド語で“魔法”という意味。とはいえ、それは映画に出てくるような派手な魔法ではなくて、森に霧が降りる朝の空気とか、凍った窓にできた模様とか、日常のなかにふいに現れる、小さな不思議のことをそう呼ぶそうです。
フィンランドの子ども向けのお話にも、よくこの“タイカ”という言葉が出てきます。おばあちゃんが煮てくれたスープが、寒い日の心をあたためてくれたとき。うさぎの足跡をたどっていったら、思いがけない場所に出たとき。そういう“ほんのちょっと不思議で、でもうれしいこと”を、タイカという一言に込めてきたのでしょう。
そんな名前を持つ糸だからこそ、模様がきっちり出るのではなくて、ちょっと不規則に色が変わるところが、かえって魅力に思えてきます。「きれいに揃えようとしなくていい」そんなやさしさが、どこかにある気がして。