イギリスに、ケリーヒルという羊がいます。ウェールズのケリーという村から名前を取った品種です。
顔は白く、目のまわりと鼻先に黒い斑が入ります。耳は黒く、毛が生えていません。脚にも黒が入ります。写真で見ると、誰かが後から描き足したような顔立ちです。
ところがこの品種の基準には、変わった一文があります。毛は白であること。黒や灰色が混じったものは外される、と。
あれだけ模様を持っている羊なのに、模様は顔と脚にとどまり、毛には出てこない。出てはいけないことになっている。
理由のひとつは染めにあります。混じり気のない白は、どんな色も素直に受け取ります。淡い色ほど、下地の白さが効いてきます。
ケリーヒルは一時期、数が減って希少な品種に数えられていました。今は小さな農場の手で数を戻しています。
顔がいちばん目立つ羊の、いちばん地味な部分。それが、色を載せる場所になっている。羊の話としては、少し皮肉が効いています。
空から色を取った極太糸が、その白から生まれています。
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)














