毛糸を選ぶとき、玉の状態で判断するのが当たり前です。ところがトーンオントーンで染められた糸は、その判断があまり役に立ちません。
トーンオントーンとは、同じ色系統の中で濃淡だけを変化させる染色方法です。玉に巻かれている状態では、濃い部分と淡い部分が重なり合ってしまうため、差はごくわずかにしか見えません。ところが編み地になると話が変わります。糸が横に並び、面になった瞬間に、濃淡が広がりとして目に入るようになるのです。
その結果、メリヤス編みだけで編んだはずの一枚が、平らに見えなくなります。膝の上に広げて少し離して眺めると、布そのものに奥行きがあることに気づきます。模様編みで凹凸を作らなくても、色が表情の役目を果たしてくれるわけです。
プロラナの「メリノ ピュア 125 レトロ」は、エクストラファインメリノウール100%のイタリア製で、全20色。レトロという名前のとおり、どの色も少し時間を経たような、記憶に近い色調をしています。
この手の色は、秋の光と相性がよく知られています。夏の強い光の下では沈んで見えた色が、光がやわらぐ季節になると深みのほうが前に出てくるためです。
模様を入れずに、ここまでのものができる。
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)














