こんばんは、細野カレンです。
今夜は、糸のなかにひそむ「構造」について、そっとお話ししたいと思います。それは一見、見逃してしまいそうなほどに小さな違い。けれど編む人の手の中では、その違いがゆっくりと輪郭を描きはじめます。
シングルプライという糸。
通常、毛糸は何本かの細い糸を撚り合わせて、ひとつのまとまりに仕上げられています。撚りが強ければ強いほど、毛羽立ちにくく、目も揃い、丈夫に。でも、そこにはある種の「規律」が宿ります。糸が、まるく、かたく、ひとつの声になるように。
けれどシングルプライは、そうではありません。一本の繊維がそのままのびていく、撚りを加えずに、ただ一本で存在する。そこには、少しだけあいまいで、少しだけ気まぐれな、静かな揺らぎがあります。強く引けば少し頼りなく、でも、やさしく編めばそのままの手ざわりが目にあらわれてくる。
撚りがないということは、素材の息づかいがそのまま残っている、ということなのかもしれません。
だからこそこの糸は、柔らかさを宿します。
それは単に「ふんわりしている」というのとは少し違って、編み目のあいだに空気を含み、動きにともなってやさしくほどけてゆくような、そんなやわらかさです。
編み手の指先の加減、気温や湿度、そのときの気分まで。シングルプライは、そうしたものを受けとめながら、静かに編まれていく糸です。
…そんな構造の奥ゆかしさを、実際に感じさせてくれる毛糸が、ひとつあります。ドイツの糸づくりに真摯に向き合ってきたアトリエ ツィトロンの「ラヴリー」。














