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神戸の午後に出会った毛糸の記憶と、アテネア トーンズという名前

神戸の午後に出会った毛糸の記憶と、アテネア トーンズという名前

こんばんは、細野カレンです。

目を開けたら、そこは南京町の広場でした。

赤い灯籠が空に浮かび、焼き栗の甘い香りが風にのって漂ってきました。
まわりはにぎやかなはずなのに、不思議と静かで、自分だけがその時間の中にいるような、そんな感覚でした。

足元をすり抜ける鳩を見送りながら、風がスヌードをやさしく揺らすのを感じました。

夢か現実かもわからないまま、気がつくと私は歩き始めていました。
見知らぬはずの道が、なぜか懐かしく感じられて、心がすうっと落ち着いていくようでした。
路地を抜けると、小さなカフェのテラス席が見えてきて、私は迷うことなく椅子に腰を下ろしました。

コーヒーの香りが立ちのぼるころ、隣の席にいた小さな子どもが、こちらを見つめてこう言いました。

「ねえ、おばちゃん、その服、色が音みたいだね。」

思わず笑ってしまいました。その言葉がまるで詩のように胸の奥に残ったのです。

席を立って歩き出すと、やがて港のほうへと景色が開けていきました。
防波堤の先には、大きな客船が停まっていて、私はふと、それを見上げて立ち止まりました。

髪をなでる風に少し目を細めながら、スヌードをそっと引き寄せました。
そのやわらかな肌ざわりが、まるで自分自身をやさしく抱きしめてくれるように感じました。

港沿いの道を自転車を押して歩いていると、ふと背中に誰かの視線を感じて振り返りました。
でも、そこには誰もいませんでした。
ただ、さっきの子どもの言葉だけが、なぜか胸の奥に静かに残っていたのです。

「色が音みたいだね。」

それが嬉しくて、私はもう一度、編み地に触れてみました。
本当にそうかもしれないと思いました。色が重なるこの毛糸には、音のような響きがあるような気がしたのです。

しばらくすると、異人館の坂道へとたどり着きました。
ゆるやかな石段を登りながら、深呼吸をひとつ。
まるで空気そのものが、記憶のどこかとつながっているようでした。

元町通りの裏手、小さな古本屋の前で足を止めました。
古びた棚の中から一冊、背表紙の色だけで選んだ本を手に取って、そっとページを開きました。

その瞬間、まるで見覚えのある言葉に出会ったような気がして、目を細めました。
ページの片隅に刻まれていた短い文章は、私の名前のようにも、気持ちのようにも感じられました。

ページを閉じて顔を上げると、目の前に「毛糸」という文字が見えました。
あれ? ここって……見覚えのある店構えです。

micono神戸元町本店。

知らないはずの風景に混じっていた、なじみのある場所。
その入り口の棚に、ひと玉だけそっと並んでいた毛糸が目に飛び込んできました。

TONES。

目が留まった瞬間、その名前が耳の奥で響くように感じました。
トーンズ。トーンズ……音……?
あの子どもの言葉が、胸の奥でゆっくりとほどけていきました。

「ねえ、おばちゃん、その服、色が音みたいだね。」

そうか――
あの子が言っていたのは、きっとこれだったんだ。
この毛糸のことを、ちゃんと知っていたみたいに。

そうして私は、ひと玉の毛糸をそっと手に取りました。
それはまるで、さっきまで旅をしていた風景の、かけらのようでした。

カティア アテネア トーンズ。
色が音になる毛糸、という名前を持った、やさしい糸でした。

たったひと玉の毛糸が、こんなにも鮮やかに記憶と感覚を連れてきてくれること。
わたし自身、あの午後のことを思い出すたびに、この色の揺らぎに、静かな驚きを覚えています。

今日ご紹介するのは、カティアの「アテネア トーンズ」。
ウール・コットン・カシミヤをブレンドした、ふんわりと軽やかな糸です。
1玉でスヌードが編める、ちょうどよい分量と、空気を含むようなやわらかさ。
長いグラデーションが描く色の変化は、まるで季節を旅しているかのようです。

そして、その名前は「TONES(音色)」。
色が、音のように心に届く糸――そう思っていただけたなら、それがいちばん嬉しいことかもしれません。

今、この色から始めてみる

どうぞ今夜は、静かな光のそばで、ゆっくりとお読みいただけますように。
毛糸のやさしさが、あなたの時間の中にもそっと灯りますように。

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