靴下の胴を編んでいるとき、手は編むこと以外の仕事もしています。五本針なら、針の端まで来るたびに次の針へ持ち替える。マジックループなら、コードを引き出して編み地の位置をずらす。どちらの方法でも同じ靴下は編めますし、優劣の話でもありません。ただ、その動作が毎周ずっと続いていきます。
アディのソックワンダー レースは、そこだけを軽くするために作られた針です。全長25センチ。片方の針先が短く、もう片方が長い。左右が非対称という、見慣れない形をしています。
短いほうで目を保ち、長いほうで編む。役割が分かれているため、小さな輪でも一周をそのまま編み続けられます。持ち替える箇所がなく、コードを引き出す箇所もありません。
つま先はどうするのか。目数が減っていくあの部分では、コードを引き出して編みます。マジックループと同じ動きですが、使う針はソックワンダーのままです。別の針に目を移し替える必要はなく、履き口からつま先まで、この一本で一足が終わります。コードを引き出す動作が、毎周ではなく最後だけになる。それがこの針のしていることです。
向き不向きもあります。短い針先を指先に添えて編む形なので、長い針を手のひらで支えたい方には窮屈に感じられるかもしれません。ここは好みがはっきり分かれるところです。
できることが増える針ではなく、編む以外の動作が減る針。靴下や袖口を繰り返し編む方にこそ、意味のある一本です。
履き口からつま先まで、この一本で。
執筆:細野カレン(なないろ毛糸 店長)














