おはようございます、細野カレンです。
季節の変わり目には、ときどき遠い風景を思い出します。
私が暮らしていたイギリス、ウェールズの田舎町。
霧の朝。石塀の影に咲く名も知らない花。
遠くで響く羊の鈴の音。
そのすべてが、何でもない日々の一部として、静かにそこにありました。
イギリスを離れてからも、不思議とその風景は色褪せません。
たとえば、少し湿った空気を含んだ春の匂いにふと立ち止まったときや、曇り空にやさしいベージュのコートを合わせた朝など、何気ない瞬間に、その土地の静けさが心の奥から立ちのぼってくるのです。
そんな空気を思い出させてくれる毛糸があります。
イギリス出身のニットウェアデザイナーによって生まれた糸で、美しさだけでなく、どこか「土地の空気をまとっている」ような佇まいが感じられます。
細やかに揺れる色。やわらかく浮き立つ光沢。
触れた瞬間、手のひらではなく、心のほうに届くような感覚。
それは、古い窓から差し込む淡い光や、何度も袖を通した服のように、知らず知らずのうちに自分の感情に寄り添ってくれるものです。
そんな英国デザインの毛糸が、いま、手に取れるかたちで届いています。
仕入れ元での取り扱いが終了したことを受けて、私たちのお店でも在庫限りのご案内となりました。
そのため、いまは少しだけ、特別なかたちでお届けすることができます。
ほんのささいなきっかけで、何かが手元に届くことがあります。
その静かな流れのなかに、この糸がそっと紛れ込んでいたなら。
それは、悪くないめぐり合わせかもしれません。
また次回も、心に残る風景のようなご紹介をお届けいたしますね。
心より、
細野カレン