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アルネ&カルロスの「Night」シリーズに隠された秘密

今明かされる「Night」シリーズに隠されたデザインの秘密

Spring Nightという名前の毛糸が無い!

久しぶりにアルネ&カルロスのソックヤーンをお客様にご紹介しようと思い立ち、いつものように毛糸にまつわるストーリーを調べ始めたところで、その名前の奇妙さに気が付いた。サマー ナイト、フォール ナイト、ウインター ナイトと三色は四季の夜空が名前になっているのだが、もう一色はスプリング ナイトではなくスターナイトなのだ。

この疑問をアルネ&カルロスの二人にぶつけてみたところ、日曜日にも関わらずすぐに答えが返ってきた。なんと素晴らしいことだろうか。

ということで、彼らからの返答をそのまま以下に引用しよう。実際には、彼らの代理人からのメールだが公式回答である。
“こんにちは、

アルネ&カルロスが、レギアのためにデザインした最初の色の組み合わせは、エドヴァルド・ムンクの絵画にインスピレーションを得てデザインされ、それにちなんだ名前が付けられました。ところが、ムンクは「Spring Night」という名前の絵画を描いていないのです。”


ということで、四季の内、夏秋冬と三つの季節の名前が付けられたムンクの絵画はあるが、Spring(春)の夜を描いた絵画は存在していないため、代わりに星空を描いたStar Nightになったというのが真相のようだ。

エドヴァルド・ムンク

叫び


知らない人はいないと思われるほど有名なこの絵画は、ノルウェーの画家ムンクの作品だ。この絵画についての解説は絵心のある人に譲るが、別の技法で描かれた同名の作品が5つあり、掲載した作品は最も著名な油彩の「叫び」で、オスロ国立美術館が所蔵していることだけを指摘しておこう。

アルネ&カルロスがレギアのソックヤーン向けに最初に提供したデザインは、ムンクが描いた一連の「Night」と名付けられた絵画からインスピレーションを得ている。以下に二人のインスピレーションの元になった絵画と、最終的な製品である毛糸で編んだ靴下を掲載したので、その二つをじっくり比べてみよう。

Summer Night:サマーナイト

Summer Night by the Beach (1902-03)
The Mystery of a Summer Night (1892)
レギア デザインライン by アルネ&カルロス エディション 1

03657 サマーナイト
「叫び」のところで書いたが、ムンクは同じ題名の作品を数多く残している。このSummer Nightにも同名の作品がいくつもあるが、同じ構図の作品が多くあるのが大変興味深い。それもそのはず、ムンクは毎年夏になるとノルウェーの海岸に滞在して、そこから眺めた夏の夜を描いたのである。

今回はその代表的な作品を二点掲載したが、10年の歳月が経過しているにもかかわらず、同じ海岸から眺めた夕日であることは明白で、落ち行く太陽を中心に据えている構図も同じという徹底ぶりに、海岸での夏の夜を通してムンクが描きたかったものは何だったのか深く考えざるを得ない。それだけに、アルネ&カルロスがこの絵画からどんなインスピレーションを得て、それをどのように毛糸のデザインに取り入れたのか、想像するだけでも心高鳴るではないか。

Fall Night:フォールナイト

Night in Saint Cloud (1890)
レギア デザインライン by アルネ&カルロス エディション 1

03655 フォールナイト
残念だがFall Nightと題名が付いた絵画をお見せすることができない。なぜなら、1892年頃にドイツのベルリンで描かれたFall Nightと名付けられた作品が残されており、オスロ国立美術館に所蔵されていることまでは分かっているのだが、インターネットにはFall Nightの絵画写真は存在していない。ところが、ここでもムンクの多作ぶりが彼の作品の理解を深める役割を果たすのである。ここに掲載した写真はNight in Saint Cloudという題名の作品であるが、Fall Nightと以下のような多くの共通点を持っているのである。

  • どちらも1892年頃に描かれている
  • どちらもムンクの友人であるエマニュエル・ゴールドスタインという詩人が帽子をかぶって月明かりに浮かび上がっている不思議な姿を描いたものである
  • どちらもムンクがパリ郊外のサン=クルーに住んでいたときに初めてこの構図を描いたものである
  • どちらもムンクがベルリンで描いた夜の窓辺のシーンの一つである
アルネ&カルロスが見たFall Nightは、Night in Saint Cloudとは違う絵画だが、ここでは、そんなことはまったく問題にならないことは、毛糸になった03655 フォールナイトを見れば十分ではないか!

Winter Night:ウインターナイト

Winter Night (1921)
Winter Night (1923)
Winter Night (1930)
レギア デザインライン by アルネ&カルロス エディション 1

03658 ウインターナイト
この作品群でも、ムンクの同一構図で描かれた作品を楽しむことができる。ムンクが50歳後半から60歳前半に描かれた作品だが、歳月を経るにつれて明らかに色使いが減り、単純化され、タッチが柔らかくなっているのは大変興味深い。

ノルウェーの氷と雪に覆われた飄々とした景色を背景に、一本の大きな枯れ木の遠く向こうに赤壁の農家が見え隠れする絵に、ムンク最晩年における心の穏やかさと暖かさを感じるのは私だけだろうか。

Starry Night:スターリーナイト

Starry Night (1922–24)
レギア デザインライン by アルネ&カルロス エディション 1

03653 スターナイト
Starry Nightは、ムンクの晩年の代表作である。毛糸の原語名はStar Nightだが、細かなことは不問に付そう。あまりにも美しく可憐な色使いの絵画と毛糸を見れば、重箱の隅を突く様なことが如何に無粋かということがお分かりいただけるはずだ。また、絵画に詳しい人が見ればすぐにゴッホの星月夜との共通点を見出すだろうが、ムンクがゴッホの影響を受けて描いた作品であることは良く知られている事実だ。

アルネ&カルロスが、存在しないSpring Nightの代わりにこの作品を選んだ理由に思いを巡らすのも一興だろう。

レギア デザインライン by アルネ&カルロス

こうして改めてアルネ&カルロスのデザインによる初期の4色を眺めると、そのデザインの完成度の高さには驚くばかりだ。発売当時、世界的な大ブームを引き起こしたのも頷ける。

今回、アルネ&カルロスの初期デザインのソックヤーンの再紹介が、ムンクの絵画作品と共に紹介するという思いも寄らない展開になったが、楽しんでいただけただろうか。

ここしばらくはアルネ&カルロスから遠ざかっていたあなたも、今回初めて初期の4色を知ることになったあなたにも、ぜひこの素晴らしいストーリーを持つ毛糸を手にしていただきたい。

そして、ここに掲げたムンクの絵画と毛糸を見比べながら、想像力を目いっぱいに働かせながら作品を編むことを楽しんで、そして出来上がった作品を身に着けている自分の姿を思い浮かべて欲しい。

おことわり

このページに掲載したムンクの作品の写真画像はすべてパブリックドメインです。また、靴下の写真はメーカーの承諾を得て掲載しています。
それ以外の画像や文章などのすべての著作物の著作権は著作者に帰属します。

執筆者

© 2023 細野淳一 なないろ毛糸 DOITUSYA GmbH

レギア デザインライン by アルネ&カルロス