おはようございます、細野カレンです。

春の神戸の街は、穏やかな陽射しに包まれています。北野の坂道を歩くと、やわらかな風が頬をかすめ、桜のつぼみがそっと開き始める気配を感じます。こんな朝は、ふと立ち止まり、自分自身にそっと問いかけたくなるものですね。

ある日のこと。ひとりの女性が、小さな編み物店を訪れました。彼女は62歳。子供たちは巣立ち、夫は仕事に忙しく、日々を静かに過ごしていました。けれど、心のどこかで、何かを変えたいという想いがあったのです。

店の中に並ぶ色とりどりの毛糸。その中で、彼女の目を引いたのはトゥーラ ツイードという毛糸でした。手に取ると、しなやかな風合いと、自然が描くような優しい色合いが心に響きます。その瞬間、彼女は「これで何かを編みたい」と強く思いました。

この毛糸で、春の神戸を映し出すストールを編んでみよう。
そう決めたときから、彼女の時間は静かに動き出しました。

淡いピンク、新緑のグリーン、空のブルー——毛糸の色の移ろいが、まるで春の景色のようにやわらかく繋がっていきます。針を進めるたびに、彼女の心も少しずつ軽くなり、これからの時間をゆっくりと楽しもうと思えるようになっていきました。

編み物とは、不思議なものですね。糸と針を手に取ることで、自分自身と向き合い、心の奥にある想いをすくい上げることができるのです。

春の風を感じるような毛糸とともに、一針ずつ、自分の気持ちを編み込んでいく。
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神戸の春に編む