糸の結び目について知っておくこと


糸の結び目に出くわしたときに心穏やかになるために

ぷんぷん

😡
ルンルンと調子よく編んでいる時に限って出くわすのが、あの憎っくき結び目。

うーーーーっ


残念なことに目の前の結び目は何をしても消すことはできません。

ですが、糸の途中の結び目は避けることができないこと、そして、なぜ結び目が出てくるのかを知っておけば、あなたの怒りは鎮まり冷静に対処できるかもしれません。

糸の途中の結び目=質の悪い毛糸なの?

いいえ。

まず知っておきたいのは、どんな毛糸でも途中に結び目があることは避けられないということです。

100均で売っているアクリル毛糸を編んでいる時でも、その100倍の値段の高価なカシミヤ毛糸を編んでいる時でも、結び目は容赦なく平等に、そして突然現れます。

どうして結び目があるの?

理由は大きく二つあります


今あなたが手にしている100g/420mの毛糸玉は、毛糸の製造工場で大きな糸巻き(コーン)に巻かれたとっても長い糸から420mに小分けされてでき上ります。

例えば、コーンに4,000mの糸が巻かれていたとします。

このコーンから420mの毛糸玉を9個小分けして作りました。

使った毛糸は、

420m x 9 = 3,780m

ですから、この時点でコーンには220mの毛糸が残っています。

420mの毛糸玉を作るには足りませんね。

さて、あなたならどうしますか?

コーンに残った220mの毛糸は捨てて、新しく4,000mのコーンを用意して小分け作業を再開しますか?

きっと、そんなことはしませんよね。

毛糸が最終製品になるまでには、羊の生育から紡績、染色と驚くほど多くの人の力と資源が使われています。

それを4,000m毎に220mも捨てることが許されるはずもありません。

これが、糸の途中に結び目がある理由の一つ目です。


・・・。。。・・・


二つ目の理由はもっと簡単で、糸を作る様々な過程で糸が切れてしまうことがあるからです。

糸切れは様々な工程で起きる可能性があります。

これが、(忌々しいことに)1玉にいくつもの結び目がある毛糸に出会ってしまう理由です。

ご注意:文中の数字は説明を易しくするために仮定した数字で、実際の製造工程での値は異なります。

理由が分かっているならどうにかならないの?

そう思われるのはごもっともです。

例えば、結び目がある糸をセカンド品として安く売るとか、捨てなくても再利用するとかできないの?

できます、少なくとも技術的にはすべて可能ですが、そのためには多くの手間がかかります。

手間が増えることが意味することは、毛糸の価格を上げる必要があるということです。

もし、僕たちが今の毛糸の値段が1.5倍になることを受け入れるのであれば(1.5倍は単なる例えです)、常に結び目のない毛糸を手にすることができるでしょう。

なんだか、メーカーの開き直りのような気がしなくもないですが、毛糸も工業製品である以上、コストを製品価格に反映させなくてはならないのは当然です。

もちろん、毛糸メーカーもできるだけ結び目を作らないよう絶えず技術革新をしていますが、最新の技術をもってしても結び目を完全になくすことは不可能です。

ご注意:一部のメーカー(レギアなど)で「ノットフリー」を謳う毛糸がありますが、結び目がないという意味ではなく、結び目が目立たないように結んである(特殊な方法でつなぎますが、ここでは詳しい説明は割愛します)ことを意味しています。

でも納得できない!

分かった!

でも、段染めソックヤーンを編んでいて、途中で結び目が出てきた時のショックの大きさと、ロングピッチの毛糸では最悪の場合、1玉から左右柄を合わせた靴下が編めないことにもなりますよね?

そのあたりは、メーカーはどう考えているの?

残念ながら段染め毛糸の結び目問題についても、生産技術の限界により起きるという見解がなされています。

以下に、ドイツの有名老舗ソックヤーンブランド「レギア」を有するシャッヘンマイヤーのウェブから公式見解を引用しておきます。


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結び目の数の許容範囲は?

今日の最先端の技術を用いても糸の結び目を完全に回避することはできず、一定数の結び目を許容する必要があります。1.75オンス/50gの毛糸玉につき1つまたは2つのノットは公差仕様の範囲内にあり業界標準です。

段染め毛糸のリピートが(訳注:結び目によって)不完全になるのはなぜですか?

現在の生産技術では、毛糸を結ぶ際に色や模様を考慮することはできません。

さて、私たちはどうすればよいのでしょうか?

きっと、色々な意見があると思いますが、ひとことふたこと書き留めてこの記事を終わりにしたいと思います。

毛糸玉に結び目があることを、そこに一本の糸があるのと同じように当たり前の事実として受け入れて、そして結び目に出会ったら、糸を編んだり処理したりする編み物の技術の一つとして解いて繋ぎ直すということを(できるだけ)楽しんでやってみるのはどうでしょうか?


僕の大好きな言葉をあなたに贈ります。

Study to be quiet(穏やかなることを学べ)

アイザック・ウォルトン

執筆者

© 2022 細野淳一 なないろ毛糸 DOITUSYA GmbH
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